現代の日本医療の大きな問題点として、看護師の不足が挙げられます。といっても現段階では一般の生活の中で医療従事者が足りないと感じる場面はそうないので、実感が湧かないかもしれません。しかし、これからの高齢化社会において老人介護や看護治療のできる人間が不足しているという事態は深刻な問題として表面化していくはずです。
では看護師不足がどういった問題を生み出してしまうのか具体的に説明していきます。医師や看護師といった医療従事者が不足してしまえば当然のことながら医療現場の規模が縮小します。地方では医師不足や看護師不足から病院が減少しているという問題が起こっています。これは都市部への医療機関の集中と関係があるのですが、問題はそれほど単純なことではありません。
まず、現状の日本では全国規模で高齢化社会がどんどん進んでいきますから、治療を必要とする地方の高齢者が治療を受けられる機会が減少していくのです。さらにこのままでは、都市部でも同様なことが起こってきますので、これは非常に危険なことと言えるでしょう。そして、やがては高齢者に限らず、若者を含むすべての世代で治療が受けにくくなります。これからの日本を支える若者が充分な医療を享受できなくなれば、日本全体にとって大きなダメージとなるでしょう。つまり、看護師ら医療従事者不足は国全体に大きな不利益をもたらす問題であるということなのです。
現在医療の現場で働く人たちにとっても、看護師不足は非常に大きなリスクがあります。同じ職場で協力して仕事ができる人間が少なくなるのですからこれも当然と言えば当然でしょう。もう既に、多くの医療施設で一人一人の負担が非常に大きなものとなりつつあります。看護師の不足によって、それまで二人で行っていた仕事も一人で行わなければならない状況になるのです。また、慢性的な人手不足が解消されないと、勤務スケジュールもかなり厳しいものとなってしまいます。そのため、医療の現場で働く人たちは精神的にも肉体的にもかなり負担の大きくなっているのが現状です。このような状態が続いていけば医療の質の低下といった二次的な問題も発生していくでしょう。
今必要なことは、看護師不足改善のために新しい人材をどんどん育てていくことです。そのような人材育成のサイクルが生まれれば人材不足も解消され、一人一人の負担も軽減されていくでしょう。また、既に働いている医療従事者の労働環境の整備にも努めるべきです。医療従事者が働きやすく、成長しやすい環境を作っていくことが一番大事なことなのです。