高齢化社会において看護師不足が大きな問題となっているのが現状ですが、その対策が何もなされていないわけではありません。看護師不足を解消することを目的に国が定めた新看護基準というものがあります。ここではその内容の簡単な説明や実際の効果について触れていきます。
これまで、看護師が不足していることについて触れてきましたが、決して看護師を志す人たちが減っているわけではありません。それは、国家試験の受験生の数からも見ても間違いのない事実です。にもかかわらず、なぜ看護師が慢性的に不足しているのかということですが、それは非常に離職率が高いためです。出産のためといった仕事そのものが原因ではない理由もありますが、それ以外は看護師という職業の過酷な労働事情が原因となる離職が大きな割合を占めています。以前より看護師の仕事は辛いものとして知られていましたが、最近では休暇が取にくくなった、規則が厳しくなったといったことも離職率の高さに関係しています。実際、看護師の資格を持ちながら、看護師として働いていない人の数は約60万人とも言われており、その労働環境の大変さが想像できます。
そういった現状を踏まえ、国が定めたのが新看護基準です。新看護基準とは何かということですが、簡単に言うと「患者7人に対して看護師が一人担当する」というものです。そしてこの基準を満たしている病院は通常よりも高い診療報酬が得られます。この新看護基準を活用することによって、看護師は従来より担当患者数が減って労働負担が軽減されて収入もアップできるというのが国の考え方の根底にあります。さらに、これをアピールすることで看護師不足を解消したいと考える医療施設にとってプラスになる、と定められた対策なのです。
しかしながら、新看護基準は担当患者数とそれに対する診療報酬のみを定めただけで、それ以外の具体的な方策は提案されていません。そのため、以下に述べるような問題点があり、まだまだ国による対策が十分とは言えません。
上記の通り新看護基準は看護師不足を解消するために役立つ内容となっているのですが、問題点もあります。その問題点とは、患者を担当する看護師が「正看護師」でなくてはならない、というものであり准看護師や看護助手の人たちは看護師として数えられないのです。そのため病院同士で正看護師の採用競争をしたり、同じ病院の中でも正看護師を奪い合うという事態を招いてしまっているのです。そういった状況が、かえって働きにくい、やりがいを感じられないと看護師のモチベーションを下げ、辞めてしまうケースも出ています。結局、新看護基準が看護師不足を助長してしまっているのでは、という考え方もあるほどで、現在十分な効果を果たしているとは言い難いのです。